各分野の専門家が連携して災害総合支援機構を設立
2013/12/24
東日本大震災をはじめとする大災害の被災地で日常生活を取り戻すための支援活動を行ってきた専門家が、「復旧・復興のための人的資源の活用が十分できていない」という反省に立ち、「一般社団法人災害総合支援機構」を設立すると発表しました。2013年12月13日（金）午後5時から、東京・渋谷区の建築家会館で開催された設立総会では、日常生活に関わるさまざまな分野の専門家の連携が呼びかけられ、災害コーディネーター制度の創設などをめざす事業計画が承認されました。
災害コーディネーター制度の創設をめざす
設立総会では、弁護士の安藤建治氏の開会挨拶に続き、公益社団法人日本建築家協会（JIA）名誉会員の建築家、中田準一氏による基調講演が行われました。
中田氏は、「過去の大災害において被災者および被災地の生活者に支援活動を行ってきた経験から、災害の初期段階から復興に至る過程で、多くの専門家の連携がきわめて重要であることがわかった。行政だけでは被災者に対するきめ細かな対応に限界があり、日常性を取り戻す早期の生活再建のためには、災害に対するマネジメントを適切にコーディネートする人材や組織の存在が必要だ」と、災害総合支援機構設立準備会の発起人を代表して設立趣意を述べました。
また、基調講演では、専門家の連携の重要性と災害コーディネーター制度の必要性を訴えるこれまでの取り組みが、次のとおり再確認されました。
●「能登半島地震被災建築復興支援に向けての提言」（2007/3/25）で災害コーディネーターの育成・導入の必要性をJIAとして国や石川県に対し提言
●新潟県中越沖地震災害（2007/7/16）で弁護士と建築家が同じテーブルについて被災者の相談に対応
●日本建築学会のタスクフォース「巨大災害に備えて」に参画し、シンポジウム（2010）で「災害コーディネーター制度の必要性」を提案
●東日本大震災から1年後、支援活動に従事した有志が集まり「災害コーディネーター」を育成するための組織に関する研究会活動を開始（2012年3月から7回開催）
こうした活動をうけて、2013年3月に40人の専門家有志が「（仮称）災害総合支援機構設立準備会」を立ち上げ、災害コーディネーターの制度化に向けた活動を本格的に開始し、設立発起人の募集と設立総会開催の準備を進めてきました。
設立発起人リスト（12月13日現在）には、弁護士23名、建築家37名のほか、不動産鑑定士、技術士、一級建築士（構造・設備・施工管理・行政）、司法書士、手話通訳士、中小企業診断士、マンション管理士、土地区画整理士、社会保険労務士、介護士、薬剤師、教育機関所属（大学）などの専門家116名が名を連ね、最終的には120名を超える見込みです。
新機構は一般社団法人として立ち上げ
設立総会の議事では、日本大学教授・工学博士の根上彰生氏が議長に選出されたあと、設立趣意書の読み上げと新法人設立の発議が行われました。
設立趣意書には「活動理念」が掲げられ、生活者からの信頼を第一義とし、以下の理念に基づき活動することが確認されました。
災害は人々の日常生活に多大なダメージを与える。われわれ専門家は、被災者が日常生活を速やかに取り戻すことができるように、生活者の立場に立って、自主自律の精神に基づき総合的に支援する。
独立行政法人防災科学技術研究所客員研究員の技術士（都市及び地方計画）、佐藤隆雄氏からは、18士業団体が正会員となって設立された災害復興まちづくり支援機構との違いについて、「災害総合支援機構は、団体ではなく個人の資格で加盟することと、任意団体ではなく一般社団法人とすることが大きな違いだ。継続的な人材の育成や資金援助を受けやすい団体の特性を生かして、災害復興まちづくり支援機構とは共同で、制度としくみの提案をしっかり行っていくことになるだろう」と補足説明が行われました。
また、関東学院大学非常勤講師の一級建築士、庫川尚益氏からは、初年度の活動計画とあわせて今後のスケジュールが報告され、2014年1月31日に定款案説明会を、3月17日には建築家会館・1階大ホールで設立記念シンポジウムを開催する予定であることが発表されました。
総会の審議終了後、あさひプロボノ事務所代表の技術士（建設、総合技術監理部門）、旭勝臣氏が閉会挨拶を行いました。設立総会を経て災害総合支援機構では、国家資格またはこれに準ずる公的資格を有する専門家や関係団体に向けて、さらに広く参加を呼びかけていくとしています。
（編集部）
