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運営管理MANAGEMENT

管理会社との付き合い方のはじめの一歩

2014/10/7

マンション管理の主体は管理組合

最近、区役所の相談会や私の事務所のホームページに「マンション管理会社」について相談が多く寄せられています。マンション管理組合と管理会社の関係はマンション管理適正化法」に規定されています。

時代の流れとともに、マンション管理を取り巻く環境にも変化が表れ、管理組合と管理会社とトラブルも多くなったことから、2001(平成13年)に「マンション管理適正化法」が施行されて、管理組合・管理会社・売主の三者の責任関係が明確に規定されました。

この法律によって、管理組合が安心して管理業務を管理業者にお願いできるようになりました。

しかしながら、「マンション管理の主体はマンション管理組合」である」ことは法律「マンション適正化法にも謳われております。マンション管理はホテルと違い、管理会社から100%のサービスの提供を受けるのではなく居住者もそのサービスの一翼を担うことが大切です。

マンション管理会社とどのように付き合えば、管理組合の役員の職務が軽減されて、なおかつ、皆様のマンションが安心・安全な資産価値の高いマンションになるのかをご一緒に考えてゆきましょう。

マンション管理委託契約書

マンション管理業務は、管理組合の役割ですが、管理業務は極めて広範囲かつ複雑で、しかも高度の技術や専門性を必要とし、革新的な設備設計や新たな設備機器の開発により、マンションの設備はますます高度化し複雑化しています。

一方、本来の職業あるいは業務に就いている区分所有者が管理組合の役員として管理業務に専念することは困難な場合が多いものです。管理業務は長期にわたる継続性、安定性があって初めて良好な成果が期待できる性格のものであり、組合役員が変わるたび、方式や方針が変わっていては円滑なコミュニティの維持や向上は難しくなります。

このようなことから、マンション管理に関して専門知識や能力、技術を有する管理業者に外部委託する関係が生じることになります。

国土交通省の「平成25年度マンション総合調査」(2014年4月公表)によりますと、すべてをマンション管理業者に委託している割合は、単棟型が78.5% 団地型が56.3%でほとんどのマンションが管理を管理会社に委託しています。

管理組合と管理会社が管理委託契約を締結して、業務を委託して行うのが一般的です

法律でいうところの委託契約は「なにかをするという約束をした」という意味になります。ですから、言葉の意味そのものは「口約束」とあまり変わりがありません。しかし、口約束では、「言った、言わない」という問題になるので、だれが、いつ、何を、何回行うということを明確に示して書面にします。これが管理委託契約書です。

以前は管理委託契約書の具体的内容は管理組合とマンション管理業者とが協議して双方が合意した内容を成分化すればよかったのですが、その当時の管理委託契約書には内容が不十分なものが多くあり、混乱を生ずる場合がありました。

そのため、国土交通省が「マンション標準管理委託契約書」を作成して管理委託契約を締結する場合の指針を関係団体に通知しました。それにより、ほとんどのマンション管理業者がこの「マンション標準管理委託契約書」に基づいて作成したものを管理委託契約書として採用しています。

マンション管理会社との信頼関係の構築

マンション管理会社は究極の24時間サービスといわれています。

昼間は管理員さんが、巡回や清掃などの共用部分の維持管理を行っています。そして管理員さんが帰宅した後は、受水槽・給水ポンプ・エレベーターなどの共用部に設置されたセンサーや専有部に取付けられた通報機から、管理事務室に設置されたメインコントローラーに送られた異常信号は、電話回線を通じてオンラインで警備会社へ異常発生を知らせます。24時間居住者の皆様の快適なマンションライフを見守っています。

一般社団法人マンション管理業協会が10月1日に発表した『マンション管理業の実態調査 調査結果報告書』で、フロントマンが業務上でのやりがいを感じるのは「理事会役員に信頼されていると感じる時」が87.8%で最も多く、「上司に実力を評価される」ことや「ほめられること」の社内評価(40%台)を大きく上回っていました。

一方で、管理組合から「管理委託契約に書かれていない不当な要求をされた。」というフロントは7割を超えています。

管理組合と管理会社との関係は、前述の管理委託契約書に記載されています。

契約書では、一般的に管理組合が「甲」、管理会社が「乙」と記載され、契約書上では平等の関係です。それなのに、理事さんの中には、理事会でいきなり、管理会社の担当者に怒鳴ったり、上から目線で話したりする方が少なくありません。

本来、管理組合と管理会社はよきパートナーであり人間関係と同じように信頼関係を構築しておつきあいすることが非常に大切です。信頼関係のないビジネスパートナーは不満が改善されず積もることで不信感につながり、修復不可能な関係となります。

管理会社と信頼関係が構築されているマンションでは、管理会社も何より提案をしやすくなるため、資産価値の高い、安心・安全・快適なマンションになり、役員さんの職務も軽減されるといわれています。

管理会社に下手に出る必要は決してありませんが、感謝や労いの言葉は大切です。 それはマンションに限らず家庭でも友人関係でも、人間関係の基本だと思います。

適正な時期に適正な修繕をしている等、管理が行き届いたマンションの資産価値が正しく評価されるためには、専門知識、客観性を持ったアドバイザーとして管理会社のマネージメント能力がマンションの資産価値を左右する時代になりました。

居住者のお一人、お一人が管理会社のマネージメント能力を120%引き出すような、信頼関係構築するように接することが、安心・安全・快適な資産価値の高いマンションになる近道ではないでしょうか。

(マンション管理士/松本 洋)




バナースペース

図版 CHART

図: 区分所有者・管理組合・管理会社の関係(資料提供: 松本マンション管理士事務所)

(クリックして拡大)

筆者紹介 PROFILE

松本 洋(まつもと・ひろし)

マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引主任者、測量士補、2級ファイナンシャルプランニング技能士、損害保険募集人(全種目)。不動産会社の賃貸物件営業開発、マンション用地開発、マンション売買会社責任者、マンション管理会社のフロントマネージャー、企業内マンション管理士などを経て、2012年に松本マンション管理士事務所開設。現在、首都圏マンション管理士会城東支部副会長、東京都マンション管理アドバザー、東京都高齢者住宅支援員、みらいネット登録補助者。台東区マンション管理士会、マンションコミュニティ研究会所属。著書に『買ったときより高く売れるマンション』(アーク出版)ほか。