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維持管理MAINTENANCE

「マンション敷地売却」制度の創設が本格化

2014/2/25

国土交通省は、耐震性が不足するマンションに関する政策の実現を加速しています。2013(平成25)年度の耐震改修促進法改正に続き、2014年度は建て替え等の円滑化を促進するため、マンションの敷地売却を多数決により行うことを可能とする制度を創設し、建て替える場合は容積率緩和の特例を設ける方針を決定。マンション建替円滑化法の一部改正案を、1月24日に召集された通常国会(会期は6月22日までの予定)に提出する予定です。

国が耐震性不足マンションの再生を促進

内閣総理大臣の諮問機関として2013年1月に発足した「規制改革会議」は、同年6月の第1回答申のなかで、マンション高圧一括受電サービスの導入推進やスマートコミュニティの普及、老朽化マンションの建て替え促進など、マンション生活に関係する提言をまとめていました。

この答申をうけて、6月14日には「規制改革実施計画」が閣議決定され、老朽化マンションについて、建て替えを含めた再生事業が円滑に進むよう、区分所有建物に関する権利調整や建築規制等のあり方、専門家による相談体制等を含めた、多角的な観点からの総合的検討が実施されることになりました。

11月28日には、国民の関心が高い分野の規制改革に関する「公開ディスカッション」を開催。「保険診療と保険外診療の併用療養制度」と並んで、「老朽化マンションの建て替え等の促進」の二つがテーマに選ばれ、規制改革会議における論点の整理と規制改革推進のための世論喚起が図られました。

内閣府および国交省によると、全国のマンションストック戸数は約590万戸といわれ(2012年末現在)、このうち1981(昭和56) 年の改正建築基準法施行による新耐震設計に対応していない、いわゆる旧耐震マンションは106万戸と推定されています。一方で、マンションの建て替え事業の実施件数は183件にとどまります(2013年4月現在)。

マンションの建て替えについては、現在でも、区分所有者の全員同意による建て替え(除去)制度が存在しますが、実現には多くの困難を伴います。また、建替円滑化法や区分所有法に基づく建替事業も可能です。ただし、どちらも区分所有者と議決権の各5分の4以上による建替決議が必要とされ、団地内の区分所有建物を一括建て替えする場合には、さらに区分所有建物ごとに区分所有者と議決権の各3分の2以上の賛成が必要となります。

さらに、建替円滑化法による建替事業は、区分所有権が再建後のマンションに移行する権利変換が必要となり、区分所有法による場合は、区分所有権を事業者(デベロッパー)に個別売却したあと再建後にあらためて区分所有権を取得することになるなど、権利調整の手続きが複雑でした。

こうした背景から、国交省では老朽化マンションの再生を促進するため、建物敷地売却制度の創設を打ち出しました。概要は次のとおりです。

●区分所有者の議決権および敷地利用権の持分価格の各5分の4以上の多数でマンション敷地売却決議

●決議合意者の4分の3の同意でマンション敷地売却組合を設立

●買受人(デベロッパー)にマンションと敷地を売却し分配金を取得することで、区分所有者は、@新マンションへの再入居、またはA他の住宅への住替えを選択

●耐震性不足の認定を受けたマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについては、容積率制限を緩和

●マンション敷地売却に関する支援措置(予算、税制)や専門家による相談体制等を整備

再生が必要な老朽化マンションが増加しているなか、建て替えを巡る住民間の意見対立や権利上・費用負担等の問題を解決するために、新制度が有効に機能することが期待されます。

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(編集部)




バナースペース

図版 CHART

文書1: 新制度によるマンション敷地売却の概要(出典: 国土交通省「新たな老朽化マンションの再生促進策(案)について」)

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文書2: マンションの敷地売却制度と建替制度との比較(出典: 同上)

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文書3: 所得税・法人税・登録免許税・不動産取得税等の特例措置の創設・延長(出典: 国土交通省「平成26年度国土交通省税制改正概要」)

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