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弁護士平松英樹のマンション管理論

<連載第43回>

区分所有者の集会招集請求について

2014/6/17

今回は、区分所有法34条3項に基づく区分所有者の集会招集請求について考えてみましょう。

区分所有法上の「集会の招集」について

区分所有法34条は、「集会の招集」について以下のように規定しています。

(集会の招集)
第三十四条 集会は、管理者が招集する。
2 管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。
4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

招集請求の定数について

上記のとおり、区分所有法上、「区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するもの」は、管理者に対し、集会の招集を請求することができます。

上記の定数は規約によって減ずることができますので、例えばこの定数を規約で「区分所有者の議決権の10分の1以上を有するもの」と減ずることは可能です。

ちなみに、マンション標準管理規約は、この定数について「組合員総数の5分の1以上及び第46条第1項に定める議決権総数の5分の1以上」としています[注1]。

招集請求後の手続について

区分所有法あるいは規約で定める一定数以上の区分所有者(組合員)から管理者(理事長)に対して集会(総会)招集請求がなされたとき、管理者(理事長)は、2週間以内にその請求があった日から4週間以内の日を会日とする集会(総会)招集の通知を発しなければなりません。

仮にこの通知が発せられない場合には、集会(総会)招集請求をした区分所有者(組合員)は集会(総会)を招集することができます(区分所有法34条4項、マンション標準管理規約(単棟型)第44条2項[注1])。

解釈上の問題点について

(1)問題の所在

区分所有法上は、招集の通知に関し、「集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。」と規定しています[注2]。

標準的な管理規約[注3]では、原則として「会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知」を発しなければならず、例外的に「緊急を要する場合(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において」この期間を短縮することができるとされています。

そうすると、管理規約上、組合員が総会を招集する場合には、少なくとも会議を開く日の2週間前までに通知を発しなければならないことになりますが、仮に理事長が総会を開く場合には、「緊急を要する場合」として「理事会の承認」を得て、「5日間を下回らない範囲において」総会招集の通知を発することができるようにも思われます。

ちなみに、もし理事長による総会開催通知(総会招集請求の日から4週間以内の日を会日とする総会の招集の通知)の方が先になされれば、その後は区分所有者による総会招集は許されないと解されています(『コンメンタールマンション区分所有法(第2版)』稻本洋之助・鎌野邦樹著[日本評論社、2004年]204頁参照)。

では、組合員による総会開催通知の方が先になされた場合はどのように考えるべきでしょうか?

例えば、組合員の方が、招集請求してから14日を経過した後(例えば請求から16日目)に、その16日後を会日(すなわち請求から32日目の総会開催)とする通知を発しているときに、理事長の方が、招集請求を受けて2週間を経過した後(例えば請求を受けてから18日目)に、管理規約43条8項[注3]に基づくという理由で、その8日後を会日(すなわち請求から26日目の総会開催)とする通知を発した場合(総会招集通知は組合員の方が先であるのに、総会開催日は理事長招集の方が先となる場合)について、どのように考えるべきでしょうか?

(2)私見

この点、例えば、会社の株主による招集請求(会社法297条)[注4]の場合は「裁判所の許可」を得て招集することになりますので、仮に同一議題の株主総会招集が競合した場合は、裁判所の許可決定に基づく総会招集の方が優先すると解することは容易です(なお『逐条解説会社法 第4巻 機関1』酒巻俊雄・龍田節編[中央経済社、2008年]53頁参照)が、マンション管理組合員の総会招集については裁判所が介在しないため、株主総会の場合と同列に論じることはできません。

ただ、やはり上記例のような場合、結論的には組合員が招集した総会の決議の方を優先させるべきでしょう。仮に双方の総会が開催されて矛盾するような決議が成立した場合は後の決議(すなわち組合員招集総会の決議)の方を最終的な団体意思の表れとして優先させるべきでしょうし、あるいは理事長招集総会についてはそもそも緊急臨時総会(標準管理規約43条8項)[注3]の要件を満たしていないということで瑕疵ある総会決議になることもあり得るでしょう(現実的には他にも様々な瑕疵が生じ得るでしょう)。

いずれにしても、結果的には組合員招集の総会決議の方が優先するのではないかと思います。

(弁護士/平松英樹)



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注釈 NOTE

注1: マンション標準管理規約(単棟型)第44条について
 (組合員の総会招集権)
第44条 組合員が組合員総数の5分の1以上及び第46条第1項に定める議決権総数の5分の1以上に当たる組合員の同意を得て、会議の目的を示して総会の招集を請求した場合には、理事長は、2週間以内にその請求があった日から4週間以内の日(会議の目的が建替え決議であるときは、2か月と2週間以内の日)を会日とする臨時総会の招集の通知を発しなければならない。
2 理事長が前項の通知を発しない場合には、前項の請求をした組合員は、臨時総会を招集することができる。
3 前2項により招集された臨時総会においては、第42条第5項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する。

注2: 区分所有法35条について
 (招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
2 専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
3 第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
4 建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
5 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

注3: マンション標準管理規約(単棟型)第43条について
 (招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
2 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。
3 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。
4 第1項の通知をする場合において、会議の目的が第47条第3項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
5 会議の目的が建替え決議であるときは、前項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。
 一 建替えを必要とする理由
 二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持及び回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
 三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
 四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
6 建替え決議を目的とする総会を招集する場合、少なくとも会議を開く日の1か月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について組合員に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
7 第45条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。
8 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。

注4: 会社法297条について
 (株主による招集の請求)
第二百九十七条 総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。
3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。
4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。
 一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
 二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

筆者紹介 PROFILE

平松英樹(ひらまつ・ひでき)

弁護士、マンション管理士。1968年(昭和43年)生まれ、1991年(平成3年)年早稲田大学政治経済学部卒業。不動産管理会社勤務を経て弁護士登録(東京弁護士会)。EMG総合法律事務所(東京都中央区京橋1丁目14番5号土屋ビル4階)、首都圏マンション管理士会などに所属。マンション管理、不動産取引・賃貸借(借地借家)問題を中心とした不動産法務を専門とし、マンション管理、不動産販売・賃貸管理、建築請負会社等の顧問先に対するリーガルサービスに定評がある。実務担当者を対象とする講演、執筆等の実績多数。著書に『わかりやすいマンション管理組合・管理会社のためのマンション標準管理規約改正の概要とポイント』(住宅新報社)ほか。